川柳家 尾藤一泉 氏のなるほど川柳豆知識 入選のコツ
2008年11月28日

「オリックス マネー川柳」がはじまり、私も選者として作品を楽しく拝見しています。
5回目を迎える募集ですが、気付いたこともございますので、応募される方はぜひご覧ください。


(1)単なる言葉遊びにならず、「マネーに関する思い」を伝えましょう
川柳の歴史的一時期に「狂句(きょうく)」と呼ばれる言葉遊びの作品が中心になってしまった時代があります。表面的言葉の面白さや謎々的な楽しみを句にした時代です。

  円高が これでほんとに ええんだか
  総理さん 金くれるらし あっそうか(麻生か)

とても面白い作品ですが、表面的な言葉だけでは作者の訴えたい「マネーに関する思い」が伝わってきません。面白い言葉遊びでありながら、しっかりと「マネーに関する思い」が詰まった作品にして入選をねらいましょう。

(2)5・7・5のリズムを守るようにしましょう

  金だけを 信じた会社が 消えてゆく
  川柳で 賞金取っても 黙ってよ

いずれも面白い視点の作品ですが、残念ながらリズム感に欠けています。というのは、ふつう5・7・5のリズムである川柳ですが、真ん中の7音で「信じた会社が」とか「賞金取っても」など、いずれも「8音」になっています。すなわち、5・8・5というリズムです。
最近の話し言葉は、偶数音が好まれるということもあるようですが、定型詩である川柳にとって、流れるような5・7・5のリズムは、読者に対して優れた伝達性があり、共感が得られやすい形です。
もちろん、内容がよく、「リズム感」があれば、決して定型だけにこだわりませんが、そういう非定型でよい作品を作るのは、定型の器に載せて作るよりも難しく、経験と実力が必要になるのです。

(3)同想に注意しましょう
川柳は、わずか十七音の文芸です。まして、「マネーをテーマに」などと題材が絞られると、誰もが同じことを考えてしまうことが起こります。これを「同想」といいます。

  貯めている 金ではなくて 体脂肪

今日までの募集の中に同じような句が10句ほど見られました。
誰でも考えそうなモチーフは、結局、どの句も相打ちになってしまいます。
日常の平凡な風景から、他人が見つけないような題材を取り上げると、それだけで輝きが増してくるものです。単純発想を避け、他人が見落としたり気付かないことを句にするようにしましょう。

以下につづく「入選のコツ」もぜひご覧ください。

2007年12月04日

「学問に王道なし」といいますが、川柳にも王道はありません。
私からアドバイスできる「コツ」があるとすれば、3つの「コツ」でしょう。
3回に分けてご紹介します。参考にしてください。


コツ1 単純発想を避ける
第3回の「マネー川柳」は、8万5千句を超える応募がありました。選者としては、全ての句に目を通すわけですが、「同想句」はひとつのチェックポイントになります。

たとえば、
  ATM 利子より高い 手数料
という句は、第2回も多く見受けましたが、第3回でも10名以上の方から同じ句が応募されていました。残念ですがこういった「同想句」は候補にあげることができません。

さらに、
  ATM 利息うち消す 手数料
  ATM 利息を越える 手数料
  ATM 利息吹き飛ぶ 手数料
  ああイヤだ 利子より高い 手数料
などの「類想句」まで入れると、100句以上の句がこのパターンでした。 こういった、誰もが思いつく事象を説明しただけでは、入選に至ることは難しいでしょう。

単純発想を避け、他人が見落としたり気付かないことを句にするようにしましょう。

2007年12月11日

前回に続き、3つの「コツ」の2つ目をご紹介します。

コツ2 一語を大切に
川柳は「五・七・五」、たった十七音の勝負です。一語、一音を大切にしましょう。

  のし袋 中味を談合 したようだ
この句は、「五・八・五」のいわゆる「中八」になっていて、リズム感に欠けています。
  のし袋 中味談合 したようだ
「を」という助詞を外しても大きく意味は変わりません。こちらの方がリズム良く、十分理解もできますね。

また、昨年のノミネート作品にこういうのがありました。
  家よりも ローンのほうが 長持ちだ
悪い発想ではなく、面白いところに目がつけられています。ただ下五の「長持ちだ」というコトバが説明的で気になります。
たとえば、
  家よりも 耐久寿命 あるローン
とすれば、多少なりとも説明的ニュアンスはなくなり、
  家よりも 寿命を誇る マイローン
のようにすれば、作者の悲哀が伝わり、読者の共感を得ることができます。

同じモチーフでも、一語の大切さ、アピールの強さにこだわってみてください。

2007年12月18日

最後の「コツ」です。

コツ3 時代を読み込む
上手い句は、上手い句として入選のチャンスが多いことは事実です。
しかし、いくら上手くても昭和にあった社会・風俗を描いても意味がありませんし、江戸時代からの風俗を取り上げても、上位にはなりません。
入選作品としてさいごに要求される大切なコツは「鮮度」です。
今という時代の中の「マネー」を作者自身の視点で切り取り、十七音という川柳の器に盛り付けることが、公募川柳における大切な視点です。

第1回から3回までの「マネー川柳」大賞句には、それぞれの時代が確実に反映されていました。

  第1回大賞
  ペイオフに かすりもせぬ金 壺に貯め 春秋子

  第2回大賞
  ケータイで 夢もおでんも 買う日本 八街落花生

  第3回大賞
  また一つ タダが消えてく レジ袋 紫陽花ママ

3回にわたって「入選のコツ」をご紹介しました。これらの「コツ」は難しいものではなく、ちょっと気に止めておくだけすぐに実践できるものばかりです。 マネー川柳の応募締切まであと1ケ月半。さぁ、この3つのコツをいかしてラストスパートです。

2007年12月25日

公募川柳の発表は、多くの人々が目にします。
ここでは最低限守りたいルールを3回に分けてご紹介します。


(1)投稿規定を厳守
新聞、雑誌、企業、どこが募集するにせよ、それぞれ投稿規定を掲載しています。規定をよく読んで、守るようにしましょう。

【様 式】
インターネット上の募集は、応募フォームがありますのでそれを使います。
規定に「ハガキ」とあったら、できるだけ官製ハガキを使います。同形の私製はがきでも構いませんが、絵はがきは書く面が裏表になるので避けた方がいいでしょう。便せん書きの封書や、画用紙などをはがき大に切って使ったり、ファックスでの投稿は、規定違反として失格になる場合もあります。注意しましょう。

【投句数】
投句数の制限が明記してあったら、それ以上の句数を書かないことが大切です。
ちなみに〈オリックス マネー川柳〉は、規定が1回に3句までですから、3句以内にしましょう。

【宛て名】
宛て名も規定どおり正しく書きましょう。「○○係」の後には「御中」なり「様」「殿」をつけるようにしましょう。

(2)ハガキには句以外は書かないこと
【書 式】
規定に、住所・氏名・性別・年齢・職業・電話番号、また氏名への振り仮名が指定してあれば、それを書き添えるのは当然ですが、自分の句に感想や注釈をつけたり、事務局あてに選者への私信、マンガなどを書き入れて来る投書がありますが、選考に際しては、句以外の要素は選考対象にはならないと思ってください。
また句の上に、番号や「一、」をつけたり、句全体を「 」ではさんだり、句尾に「。」をつけたりするのも必要ありません。シンプルが一番です。

【表 記】
文字の巧拙さではなく、小さすぎる字、はがきからはみ出しそうな大きな字、ぞんざいな崩し字、うすいインクで書かれた字などの読みにくさは、句の内容以前にハンデを負ってしまいます。もちろん誤字、脱字にはくれぐれも注意してください。
また特別の読みをさせる場合以外、句に振り仮名は必要ありません。
一句は、できるだけ一行に書く(二句なら二行に、三句なら三行に)ことがのぞましく、句中に5□7□5とコマあきを作ったり、5、7、5と句点を打ったりするのも、必要ありません。
川柳は本来、一呼吸で読み下す直立した一行詩なのです。
※最近ワープロソフトによる変換ミスが多くみられます。ハガキの場合の書き間違いも含めて、選考する立場では、訂正して使うことはありません。注意しましょう。

【筆記用具】
ふつうの濃さであれば、万年筆、ボールペン、鉛筆、毛筆、何でも構いませんが、文字はできるだけ楷書で、はっきりと書いてください。
文字を赤インクで書いたり、色を何種類も使ったカラフルなはがきがありますが、作品以外で目立とうとせず、やはりシンプルが一番です。

2008年01月08日

前回に続き、「作句の心掛け」をご紹介します。

(3)投稿規定を厳守
剽窃(ひょうせつ)は、言うまでもなく良識に反する行為ですが、自分の作品であっても、同一句を二カ所以上に投句することは、公募川柳のモラルに反します。
ただ、自分では二重投句するつもりはなく、うっかりと出してしまうことはあります。こうしたケアレスミスをなくすためにも自作の記録はしっかり取っておく必要があるでしょう。句帳をつくり、投稿先と日付を記しておくことは、自分の作品を大切にすることにつながります。

(4)不真面目な匿名は避ける
公募川柳にとっては、作品が主で作者が二次的に考えられる向きがあります。
しかし、作者を離れて放置された、糸の切れた凧のような言葉の断片では、作品とは言えません。作者は、作品との絆を大切にし、責任を持つべきです。
以前にご紹介した「雅号のつけ方」をご覧ください。

2008年01月15日
(5)継続こそ力
一度投稿を始めたら、ぜひ継続してほしいと思います。
一回や二回の投稿や一枚か二枚のはがきが落選になると、それきりやめてしまったり、自分の力を自分で見限ったりしてしまう投稿者も少なくありませんが、この種の投稿には粘り強さが必要です。
落選する理由にも、作者のうかがい知れぬもろもろの事情があるのです。単純に作品が未熟であるという理由だけでなく、たまたま同題材の句が多く重なって、入選水準の句を惜しみながら落とすことも、たびたびあるのです。
膨大な投句の中で相討ちになるほどの力なら、次の機会がきっとあるはずです。ですから、ただ落選したという結果だけで諦めてしまったり、やる気をなくしてしまったりするのは、とても残念です。
また、辛抱強い反復は、自分自身の作句力の向上にもつながります。投稿の過程で技量を磨くこともできるのですから、つねに期待と希望を失わずに、投稿を続けることをお勧めします。


(6)投函前に確認を
応募フォームに作品を入力した後には「送信」ボタンを押し、はがきは投函することになりますが、その前に、もう一度、確認してください。
宛て先は間違っていないか、投稿規定に添った書き入れはすべてなされているか、句の表記に誤字・脱字はないか、私製はがきだったら切手はちゃんと貼ってあるか…などなどです。
宛て名は合っているのに、他社への投稿であったり、肝心な差出人(作者)の名が落ちていたり、表の宛て名だけ書いて、裏は白紙のまま、投句するはずの作品が書いてないというハガキも、毎度何通か混じっています。
これらは投函前に確認すれば、かんたんに防げるミスばかりです。
競争の場に出す前に、自分の分身である作品に最後の愛情を注いであげましょう。